高級レストランMil central
2018年12月9日(日)、やってきた高地にある高級ペルー料理レストラン「Mil central」。
このお店は首都のLimaにある「Central」(セントラル)と言うペルーでも有名なお店のシェフ「Virgilio Martínez(ビルヒリオ・マルティネス)」さんがクスコに出したお店です。
高地の食材を研究開発する「研究室」も兼ねており、とてもユニークなレストランです。
このお店の料理は、結論から言うと、なんでも( ̄∇ ̄;)ハッハッハ~~と笑い飛ばしてしまう底抜けに明るいラテン系のペルー料理ではありません。(笑)
どちらかと言うと、スペインに征服された寡黙な高地の先住民が、黙々と下を向いて作った前衛的な料理という感じがします。
徹底的に先住民の食材を研究しているところは素晴らしいです。
そうでもしないと、作物の独自性が失われてしまう時代ですからね。
私も今回初めてローカルな先住民にしか知られていないジャガイモを食べることが出来ました。
素晴らしい経験になりました。
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エントランスを入ると、色々な食材がずらりと並べられて整理されていました。
いまではなかなか市場で見ることのできない品種のものもたくさんあり、びっくり!!
おおっ、チューニョもあります。
白と黒のチューニョ、タンボ・ロッジでも自家製で手作りしていますから、親近感が沸きます。
チューニョは白人系の人たちから「インディオの食べ物」などと差別されている食材ですから、ほとんどレストランでは扱っていないのが現状です。
それがこうした高級で有名なレストランで使われるなんて、夢のようです。
こちらは研究室。
食事をしに来たお客様は、自由に見学することが出来るんですよ。
今日のコースのメニューです。
こういったコースは、テイスティングコース(ペルーではMenú degustación)と呼ばれているもので、たくさんの種類が少しずつ供される、いわば「味見」のコースと言った感じです。
最初に出てきたものがこちらです。
5種類もありますね。
これは「preservacio」と言う名前です。日本語に訳すと、「保存」という意味。
アンデスの保存食を使ったもので作られています。
左から順番に見て行きましょう。
これは究極のジャガイモの保存食、チューニョを使ったお煎餅と言うか、チップスみたいなものです。
白いのがモラヤ、又はトゥンタと呼ばれる(地方で呼び名が違います)白チューニョを使ったチップスで、黒いのは黒いチューニョを使ったものです。
もちろん粉にして作るそうです。
それを隣に置かれたオレンジ色のソースにつけていただきます。
これは食材の説明のために見せてくれたもの。
赤い楕円形のものは、日本ではほとんど見かけないトマトみたいなものです。
現地でも呼び名がいろいろとありますが、クスコ地方ではトマティージャとか、サチャトマテとか呼ばれています。
日本では「木立トマト」と言うらしいです。
ナス科の樹木ですが、トマトそっくりな実が付きます。
結構大きな木なので、毎年実が付くんですよ。
味は酸味のあるトマトと言った感じです。
そして里芋みたいのは、硬い里芋、粘りがあまりなく、名前は「ウンクチャ」と呼ぶらしいです。
上の白と黒の2つがチューニョです。
木立トマトのソースがこちらです。
赤と言うよりは、オレンジに近い色です。
その木立トマトのピューレに、チーズが入っています。(一緒にピューレになっている)
トマトの香りと程よい酸味、それにチーズのこってり感と香りがして、独特の味がします。
こちらは「コカ」を練り込んだパン。
コカは高山病の薬になりますが、精製すると「コカイン」となり、その白い粉を持っていると逮捕されます。(笑)
葉を精製せずに使う分にはペルーでは合法です。
まるでお焼きのような雰囲気のコカのパンの中には、硬い里芋のウンクチャのマッシュが挟まれていました。
パンの部分はコカの青臭さが目立ちます。
このコカのパンは、次に並んでいる紫色のソースにつけていただきます。
これがコカのパンを付けて食べるソース。
紫色なのは、ブルーベリーに似たアンデスのベリー系の実「サルコ」のジャムだからです。
油が浮いたように見えるのは、そのジャムにバターを溶かしこんだからです。
高地の寒さでバターが凝固していますが、それがまたおいしいです。
この変わった食べ物は、トウモロコシのパンです。
トウモロコシもいろいろな色がありますね。
黄色い物や紫色や白いもの。
中が黄色いのはもちろん黄色いトウモロコシを使うから。
上の紫のはもちろん紫トウモロコシの色です。
なんだか日本人に馴染みのある、スイートコーンのような味がしました。
前菜1皿目を前にして、せっかく高級なレストランに来たのだから、記念写真を撮りましょうね。(笑)
今回は、ノンアルコールのドリンクの「ペアリング」を頼みました。
「ペアリング」とは、スペイン語では「Maridaje(マリダッヘ)」と言って、その食べ物にマッチするドリンクが、料理ごとに出てくるサービスのことです。
もちろん追加料金を払わなければいけません。(笑)
通常はアルコールとかワインのことが多いですが、この日は実は選挙の投票日に当たります。
ペルーでは選挙の投票日にアルコールを売ったり提供することは、法律で禁じられているのです。
それよりも何よりも、私たちはお酒に弱いし、こんな高地で飲んだら目が回ってしまいますからね。
だから選挙と関係なく、ノンアルコールのMaridajeをお願いしました。
最初のMaridajeは黒いコップに入っています。(中身が分からなくてすいません)
焼きレタスのジュースにアンデスの高地に自生するパンパアニス(アニス)を入れた、一風変わったドリンクです。
次の料理のMaridajeのドリンクがこちら、「トゥンボ」と言う酸味のあるアンデス果実のジュースです。
蜂蜜の甘みが加わり、かなり酸っぱいトゥンボをおいしく飲むことが出来ました。
2つ目の料理が並びます。「Altipulano(アルティプラーノ)」と言う名前が付いています。
アンデスの4000mの平らな高地のことをこう呼びます。
そこで採れるものを中心にした組み合わせです。
一番左は私たちの肉を食べない人用です。
なおこさんは肉を食べるので、別のもの(こちらが本来のもの)です。
では左から見て行きましょう。
これが私たち用の肉ではない料理です。
人参と「Cabuya」(カブヤ)と言う名前の白人参(やや甘い上品な味)をトウモロコシのピューレに付けて団子状にしてあります。
とても綺麗だなぁ~~。
肉の人用はこちらです。
これは羊の肉を使ったものだそうです。
羊は標高の高い所で良く放牧されていますからね。
で、味は食べていないのでわかりません。(笑)
その横に並んでいるのは、「白キヌア」と「カニワ」と呼ばれるアンデス高地の雑穀で作ったクラッカーです。
サラダの横のソースに付けていただきます。
白い食べられる花をいっぱいに飾ったサラダ。
爽やかで少し甘いドレッシングが下の方にまぶしてありました。
こちらがクラッカーに付けるソース。
チリモヤと言うペルー原産のカルピス味のフルーツのソースです。
これ、本当においしいですよ。
次の料理のペアリング(Maridaje)がこちらです。
アマランサスの温かいミルクです。
ライスミルクのように、アンデスの雑穀のアマランサスから作ります。
「セドロン」という名前のアンデス版レモングラスの香りがしました。
次は「Bosque Andino」(ボスケ・アンディーノ)です。
これは「アンデスの森」という意味です。
アンデスの、アマゾン川方向へ少し降りたやや標高が低い森のイメージだそうです。
そこには豚が多いので、普通のメニューには豚肉が使われています。
私たち二人分は、肉抜きでお願いしているので、こちらになりました。
黄色いカボチャのペーストを上下にして、真ん中に「シシリアーノ」と言う白いカボチャを挟んでいます。
まるで大根みたいな白いカボチャの食感!!。
上の紫色のパウダーは、紫トウモロコシで色を付けた「Tarwi」(タルウィ)と言うルピナスの仲間の植物の豆です。
ちょっと大豆に似た感じですが、シュウ酸があるので水に数日さらして毒抜きして使います。
アンデス高地ではよく使う食材で、市場に行くとあく抜き済みのものが売っています。
こちらは豚肉を使った本来物もです。
見た目が似ているのでびっくりです。
そしてこちらはそのルピナスの豆を使った酸味のあるペルー風マリネの「Ceviche」(セビッチェ)です。
でも結構クリーミーな感じで、セビッチェの感じと少し違和感がありました。
こちらはルピナスの豆を使ったパン。
上のトッピングもルピナスの豆です。
もちろん中身もルピナスの豆ですよ。
断面はこんな感じです。
Tarwiまでパンにするとは恐れ入りました。
でも新しい食感でおいしいです。
こちらは「アボカド」を入れたTarwiのセビッチェ。
赤いのは「Rocoto」と言う高地で採れる辛い唐辛子(パプリカみたいに見える)で、こちらはピリ辛です。
次の料理のMaridajeはこれ、カカオニブと紅茶の発酵茶。
ビネガーのような酸味があります。
「Diversidad de maiz」(トウモロコシの多様性)と言うセットです。
先住民のおばさんが風呂敷を広げてホワイトジャイアントコーンとチーズを食べている印象からできた料理だそうです。
左から2番目はトウモロコシの皮。これが風呂敷なんですね。
でもこれは飾りだけで、食べられないです。(笑)
一番左は「チョクロ」と呼ばれる未熟のホワイトジャイアントコーン。
これ、甘くなくてとてもおいしいんですよ。
市場などで蒸かして売っていたりします。
こちらはワカタイと言うクスコ周辺で採れるハーブを入れた、じゃが芋のピューレ。
ワカタイは、ヨモギに近い感覚のハーブです。
これを一番右に置かれたチップスに付けていただきます。
少し甘い味が付いたピューレでした。
これはもちろん「焼きチーズ」。
下のトウモロコシの皮は食べられない、デコレーションですって。
ホワイトジャイアントコーン(Chocro)とチーズの相性は抜群です。
でもこれ、高級レストランに来なくても、市場でも食べられるよね。しかももっと大盛りで。(笑)
こちらがトウモロコシ粉のクッキーです。
黄色と紫でとても綺麗!!。
さて、次の料理のMaridajeはこちら、「Airampo」と言うサボテンの実を使ったジュースです。
この胃潰瘍に薬効があると言われるサボテンの実は、真っ赤でとても綺麗な色をしています。
ジュースも色が綺麗!!。
酸味はあまりなく、ミントの香りがしました。
「Extrema Altura」、直訳すると、極端な高さという意味ですが、アンデスの高地にある湖のイメージの料理セットです。
これは肉を食べない私たちのための料理、「Olluco(オユコ)」と言うツルムラサキ科の芋(日本にはありません)と「Oca(オカ)」というやはり高地の芋(甘さがある)と、カボチャのピューレです。
上に散りばめられているのがその日本にはない芋たち。
これを食べるには、やはりペルーの高地に行かないと食べれませんが、これ、とても私は大好きな芋たちです。
だっておいしいんだもん。(笑)
こちらが本来の肉入りのもの。
鴨が高い湖にやって来るので、カモ肉を使った同じようなピューレの料理です。
こちらの方が綺麗だなぁ~~。(笑)
そしてこちらはやはり高地の湖で採れる「Cushuro(クシュロ)」と言う淡水の海藻のサラダです。
イクラを緑にしたようなものがその海藻ですが、食感はまるでいくらと同じプチプチ感!!
これを赤く染めたら「ベジイクラ」が作れそうです。
しかし海の香りはしませんが・・・
一緒に盛り付けられているレタスは、さっと油で揚げてあり、チリチリ感があっておいしいです。
レタスの下にはこんな仕掛けが・・・・
黒と赤と白のキヌアのサラダが出てきました。
キヌアも揚げてあります。
こんな使い方もあるんだなぁ~~と感心しきりです。
次の料理に対するMaridajeがこちらです。
これは世界3大美果として知られるカルピスみたいな味の「チリモヤ」とコカの葉とムーニャと呼ばれるアンデスのミントのドリンクです。
甘くて苦みと青臭さがあり、ミントの爽やかな香りがあります。
さて、料理の部の最後を飾るのは、「Andes central」(アンデス・セントラル)と言う料理です。
アンデスの中央という意味で、まさにこのクスコ地方がそれにあたります。
これはジャガイモの蒸し焼き料理の「Huatia(ワティア)」と言う料理をイメージしています。
そのHuatiaと言う料理法は、地面に穴を掘り、焚火で焼いた石をそこへ投入し、熱々の石の上にトウモロコシの皮を広げ、その上にジャガイモを並べ、再びトウモロコシの皮を敷きならべ、掘り起こした土で埋めて蒸し焼きにするというとても原始的な料理法です。
でもそれで蒸し焼きにしたじゃが芋は最高においしいです。
この時は、それを石で作った独特な容器で再現していてびっくり!!。
石はとても熱いので触らないようにと言われました。
さて、蓋を取って熱々のジャガイモを召し上がれ。
使われているじゃが芋は、「Papa nativo(パパ・ナティボ)」と呼ばれる、ネイティブなジャガイモたちです。
これ、もう市場で売っている姿は見たことがほとんどありません。
そして食べたこともありません。
どんな味かとても楽しみです。
この写真は私が1991年にアンデスを旅した時に遭遇した「Huatia」です。
アウサンガテの氷河を頂く山が後ろに見えています。
広大な4000mを超える高地でのダイナミックなじゃが芋料理、試食させていただく幸運に恵まれた私。
めちゃくちゃおいしかった記憶があります。
さて、ネイティブのジャガイモを食べましょう。
半分に切断してみると、中は様々な色をしています。
しかし中には火の通りが足りないのがあり、ちょっとそこが残念でしたが・・・。
もっとしっかりと火を通して出してほしいです。
しかし初めて味わうPapa nativoの味。
忘れられない体験になりました。
Papa nativは、横に置いてある緑のソースに付けていただきます。
緑のソースは、こちらで「Uchucuta(ウチュクタ)」と呼ばれている独特のピリ辛ソースです。
アンデスのハーブ「ワカタイ」と唐辛子をすりつぶして塩を加えたシンプルなものですが、私は大好きです。
さて、ここからがスイーツの部です。
これは「Cordillera Herada」(コルディジェーラ・エラーダ)、山脈のアイスクリームです。
緑の山脈のイメージと思われます。もちろん器も冷えています。
最初の頃に出てきた「トゥンボ」と、途中に出てきたアンデスのミント「ムーニャ」のシャーベットです。
実に変わり種のシャーベット!!。
中に仕掛けがありました。
わぉ~~、綺麗なピンクが目を引きます。
これはクリームとお花のムース。
すごい、地味なシャーベットの下に派手なクリームとムースが入っているなんて、驚きです。
酸味のあるトゥンボが味を引き締めます。
そして最後のMaridajeがこれ、見た目は何のこともないお茶ですが、トウモロコシとサチャインチと言って、日本では「インカインチ」と言う名前で知られているアマゾンのナッツと、低い乾燥した土地によく生えている「モジェ」と言う薬用樹木を使ったお茶なんです。
モジェはミント系の香りがしました。
なんだか不思議な体験です。
最後のデザートが出てくる前に、説明をしてくれるスタッフさん。
ペルーでも良く採れる「カカオ」を発酵させているところだそうです。(実験中みたいです)
こちらはなんと!!、アンデス原産のイモ類の、「マシュア(別名アニョ、ノウゼンハレン科)」を使ったオブラートのようなクラッカー。
とても繊細で薄くてきれいです。
芋からこれが作れるなんて、すごいです。
きっと澱粉を抽出して作っているんでしょうね。
そしてこれは「Hatia de cacao」、カカオのワティアです。
先程のネイティブなジャガイモの大地の蒸し焼きのイメージで、カカオを使ったアイスクリームを作っているようです。
シャーベットの下にカカオのクリームが入っていました。
クリーム、カカオ、シャーベットの3層構造です。
ゆっくりと混ぜて食べるとおいしいなぁ~~。
最後に特別なコーヒーをいただきました。
パフォーマンス付きです。
じっくりと淹れ方を見てみましょう。
豆はブルボン種の浅煎りのものです。
ドリッパーとサーバーはなんと!!、「ハリオ」を使っているではありませんか!!
私もいつも使っているからなんだかびっくりです。
おっとこれはNG!!
この円錐フィルターは、上からぽたぽたと、まるで「点滴」のごとくそっとお湯を落としていくとおいしく入れることが出来るのですが・・・・
ここでは一気に注いじゃってます。
これじゃちょっとお味が良くないなぁ~~。
このパフォーマンス付きのコーヒーだけで48ソーレス(約¥1680)もするんですよ。
これは失敗しました。高すぎです。
ペルーの物価からしたらさらに割高ですよ、これ。( ゚Д゚)
席のすぐ横の窓は、まるで額縁のように氷河の山「Nevado Veronica」が見えています。
最高の眺めです。
このレストランは、素材が本当に特殊で、スペイン語での説明だけだとわからないことが時々あったけれど、日本人の研修生のF君がいてくれて助かりました。
本当によく理解できましたから。
F君はあと1年半ほどここにいるそうです。
ありがとうございます。
お腹いっぱいに食べましたよ~~。別に大盛じゃないけれど。(笑)
しかも私たちはベジのコースでしたけど、マイナス感がなく、とても良かったです。
時間はもう午後4時に近いです。
3時間半もゆっくりと食べていたんですね。
なんだか貴重な体験をした一日でした。
Nao tourの直子さん、付き合ってくださってありがとうございます。