グルテンフリーの嘘、本当(8)古代小麦の話
「古代小麦」・・・この言葉を聞いたことがある方はたくさんいると思いますが、何を指して古代小麦と言うのか・・・というところが非常に混乱していますね。
グルテンフリーを標榜する方の中には、「古代小麦なら良い」という人までいる始末!!。
そりゃあね、いくら「古代」と言っても、小麦ですからね、グルテンは入っていますよ。(笑)
では、まずは小麦の進化の過程をちょっと書いておきたいと思います。
簡単に小麦の進化過程を言うと、染色体の数よる分布で3つに分かれています。
もっとも原始の状態の野生小麦は「一粒小麦」と呼ばれている、染色体数7対14本のもので、それが野生の「クサビコムギ」と交配し、「二粒小麦」と呼ばれる染色体数14対28本のものができ、それがやはり野生の「タルホコムギ」と交配して誕生したものが、現代の小麦と同じ数の染色体(21対42本)を持つ、「パン小麦」または「普通小麦」と呼ばれるものです。
かなり古くから、現代の小麦と同じ染色体のものが出来ていたんですよ。
それは、「wikipedia」に詳しく出ていますので、引用させていただきます。
以下引用・・・・
「中央アジアのコーカサス地方からイラクにかけてが原産地と考えられている。1粒系コムギの栽培は1万5千年前頃に始まった。その後1粒系コムギはクサビコムギAegilops speltoidesと交雑し2粒コムギになり、さらに紀元前5500年頃に2粒系コムギは野生種のタルホコムギAe. squarrosaと交雑し、普通コムギT. aestivumが生まれたといわれる。
普通コムギの栽培はメソポタミア地方で始まり、紀元前3000年ごろにはヨーロッパやアフリカに伝えられた。」
・・・・以上引用終わり
だから、古代小麦と言っても、色々なものが存在し、わかりにくくなっているんですね。
下記の図を見ていただくと、なんとなく全体像が分かると思いますので、貼り付けておきます。
画像はクリックすると拡大します
しかし、複雑な古代小麦は、現代においては大きく2つの系統に分かれています。
それは、自家採取しながら、延々と種をつないできた種類のもの(こちらが大半です)と、古代の遺跡から発掘された種をまいてみたら発芽したと言われる古代小麦の「カムット小麦」です。
複雑な小麦は次回に書くとして、カムット小麦とはどんなものかを少しだけ書いておきましょう。
カムット小麦は6000年前のエジプトで栽培されていたと言われています。
この小麦の種の発見は、秘密のヴェールに包まれた感があり、今や伝説の様になっています。
詳しくは、こちらのサイトをご覧くださいね。
ところで、このカムットという古代小麦は、小麦アレルギーの人の70%がアレルギー反応を起こさないそうですよ。
ラベルにそう書いてありました。
ということは、グルテンって、悪者じゃないということは一目瞭然ですね。
だって、小麦だもの、グルテン入っていますよ。
ここまでは、小麦の進化と、古代小麦のうち、遺跡から発掘された種をまいてできたという「カムット小麦」にスポットを当ててみました。
「カムット小麦」は、一つしかないので、とてもわかりやすいですね。
それに比べて、長い間毎年種を取りし、繋ぎながら人類に栽培されてきた、「スペルト小麦」と呼ばれる小麦には、色々な品種があり、そして日本人がそう呼ぶ時に、呼ぶ人の理解不足により、混乱が生じてしまっています。
「スペルト小麦」という名前は、学名の「Triticum spelta」から来ていて、小麦の祖先を指す言葉です。
ところが、小麦を古くから育てている国はたくさんあり、それぞれの言葉で呼ばれているので、最近導入された日本において、呼び方に混乱があるんです。
お米だって、日本では「お米」だけれど、英語では「ライス」、スペイン語では「アロース」と呼ばれていますからね。
ドイツの古代小麦は「ディンケル」、スイスでは「スペルス」、英語では「スペルト」という具合です。
しかし、その中で一番混乱しているのがイタリアです。
イタリアでは、古い時代の小麦のことを「ファッロ」と呼んでいます。
ところがそのファッロ、実は「一粒小麦」と「二粒小麦」、「パン小麦(普通小麦)」もすべて「ファッロ」というから紛らわしいんですよ。
実はですね、正確に言うと、「一粒小麦」のファッロは、「ファッロピッコロ(Farro piccolo)」と呼び、「二粒小麦」のファッロは「ファッロメディオ(Farro medio)」と呼び、「パン小麦(普通小麦)」のファッロを「ファッログランデ(Farro grande)」と呼んでいます。
それとは別に、少しだけ磨いた(精米みたいなもの)小麦を水に戻して柔らかくし、その後乾燥させた、イタリア料理によく使う小麦粒のことも「ファッロ」と呼んだりします。
だから、まったくをもって紛らわしいのです。
「ファッロ=スペルト小麦」と明記しているサイトもあるし、なおさら混乱してしまいますね。
もちろんイタリアでは、ファッロ=スペルト小麦というものもありますが、概ね二粒小麦の古代小麦が多いようです。
ファッロの粉をパンに使ってみると、一目瞭然に分かります。
パンらしく焼けるものは染色体42の「パン小麦(普通小麦)」の古代小麦のファッロ。
横にだらけたように生地が延びるのが染色体28の「二粒小麦のファッロ」です。
染色体数14の「ファッロピッコロ(Farro piccolo)」(一粒小麦)のファッロの粉も、パンに使って見ると、ほぼ二粒小麦と同じような使い勝手で、横にだらけるように伸びて行きました。
そんな混乱した様子は、こちらのブログでも書かれていますよ。良かったら見てくださいね。
とにかく、昔から種をつないできた古代小麦、または遺跡から発見された種を基にした古代小麦の「カムット小麦」は、現代のテクノロジーによる品種改良の洗礼を受けていません。
そのあたりが小麦アレルギーの人でもある程度(70~80%)食べられるという「特別」な小麦だと言えるでしょう。
あっ、そう言えば「カムット小麦」は「二粒小麦」の仲間だそうですよ。
写真は、広大な小麦畑が広がるスペイン北部の巡礼路の「カストロへリス」付近の風景です。
世界の小麦が自然のままの古代小麦にとって替わる時代は果たして来るのでしょうか?。
そんな時代を夢に見つつ、次回からは「現代の小麦」の最大の問題点を浮き彫りにしていきましょう。